北朝鮮との戦争勃発を警戒して市場では株安・円高が進んでいますが、今後世界情勢はどうなってしまうと思いますか?

出典:EXPRESS

4月の地政学的リスク

2017年4月6日、アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ氏は、反政府勢力支配地区に化学兵器を使用したシリア政府に制裁を加えるため、シリア空軍基地にトマホーク巡航ミサイル59発を撃ち込む指令を下しました。

サリンと思しき神経ガスの影響により現地では多くの住民が呼吸困難や痙攣などの症状に見舞われており、シリアのバッシャール・アサド政権が国際社会から大批判されていた中での決断。シリア政府軍を直接標的にするのはアメリカの歴史上初のことであり、トランプ大統領の口先だけではない並々ならぬ反テロ主義が見て取れます。

しかし、今回のシリア空爆は同時に国際社会に波紋を広げるきっかけにもなりました。ロシアにとって、シリアはソ連時代から強固な軍事協力関係を築いてきた存在。そのシリアが米国に攻撃されたとあっては、黙っているわけにはいきません。「アメリカの空爆は国際法違反である」と公然とトランプ大統領を批判しており、プーチン大統領は今後もアサド政権の支援を続けると主張しています。ロシアはシリアと共に国際社会から孤立の一途をたどっており、アメリカとロシアの緊張が冷戦以来のレベルにまで達しようとしています。

13日には、米軍がアフガニスタンのIS拠点地域にMOAB(Massive Ordnance Air Blast bomb:大規模爆風爆弾兵器)を投下。シリア空爆に続いて、中東地域に徹底した制裁を繰り返しています。

そして私たちアジア人にとって最も意識しなければならないのが、北朝鮮の問題。再三の警告を無視して核実験・ミサイル発射を繰り返す金正恩政権も国際社会から孤立の一途をたどっています。かつてブッシュ大統領に「悪の枢軸」とまで言わしめ、何度も米国との全面戦争を示唆してきた北朝鮮は、シリア同様トランプ政権にとって制裁を加えるべき存在です。

トランプ大統領が習近平国家主席との米中会談の真っ最中にシリア空爆を行ったのは、明らかに北朝鮮への牽制が目的。「支援国である北朝鮮のもめごとを中国が解決しないのならば、アメリカが中国抜きで解決する」と公言しており、もはやアメリカと北朝鮮の武力衝突は時間の問題の様相を呈しています。

世界情勢の展望

本来なら北朝鮮が核開発を止めてくれる展開を期待したいところですが、金正恩氏は支援国である中国までガン無視して他国の話に耳を貸さない上に、「全責任は米国にある」と主張し核攻撃をも辞さない声明を発表しています。

このまま北朝鮮が核実験を止めれば金正恩政権がアメリカに屈したと見なされ、逆にアメリカが北朝鮮に攻撃を仕掛けなければ弱腰と見なされかねず、両国とも引くに引けない状況。最強の米原子力空母「カール・ビンソン」まで朝鮮半島付近に向かわせ、いつドンパチが始まってもおかしくありません。しかし、シリアと違って核保有国である北朝鮮とアメリカが武力衝突すれば、その被害は甚大です。たとえ北朝鮮が敗れたとしても、韓国、日本を含むアジア一帯で数十万人規模の死傷者が出る恐れがあります。日本本土は北朝鮮のミサイルの射程圏内であり、万一化学兵器を搭載したミサイルが着弾すれば、オウム真理教の引き起こした地下鉄サリン事件の再来となるでしょう。北朝鮮からの難民が数百万人規模で日本に流れ着いたら、大規模な混乱が巻き起こることも想像に難くありません。

15日の金日成氏生誕の軍事パレードでは、性懲りもなくミサイルを発射しようとして失敗した模様。実際に撃ったらアメリカに攻撃されるかもしれないので、体面だけ繕ったのかもしれません。もしそうなら本心ではアメリカに勝てない現実を理解しているということであり、軍事衝突を避けられる可能性があります。とはいえ、来週の4月25日は北朝鮮人民軍創設85周年であり、5月9日には韓国大統領選挙の投票日が控えています。これらのイベント時にひょっとしたら何かしらの動きを見せるかもしれないので、まだまだ予断を許さぬ状況が続きそうです。

考えたくないことですが、アメリカに激高しているロシアが東アジア情勢に参戦して第三次世界大戦にまで発展する最悪のケースも無いとは言い切れません。戦争をしても誰も幸せになれないことは、二度の世界大戦を経て人類が学んだ知恵。私たち国民は、引っ込みがつかなくなったにらみ合いが何事もなく平和裏に解決されることを祈るばかりです。

株安・円高は不可避?

シリア空爆をめぐる米ロの対立、世界各地で頻発するテロ、現実味を帯びてきた北朝鮮との武力衝突……、世界情勢の緊張は極限まで高まっています。

過去の例をひもとくと、2011年に東日本大震災が発生した時期には株価が10,400円台から一時8,200円台まで急落しました。為替相場でも一気に円高が加速し、わずか1週間で83円台から76円台の安値を付けました。英国のEU離脱が決定した国民投票の時もそうでしたが、パニックが発生すると通常ではありえないような途轍もない値動きが起こります。もしも国際情勢が最悪の方向に発展したら、短期間に10%前後の急落は想定した方が良いでしょう。(戦争時に取引をしている余裕があるか分かりませんが。)

最近ではトランプ大統領が「ドルは強すぎる」と改めてドル安方針を公言して相場が円高に振れたように、今後のトレンドはしばらく円高基調に進みそうです。テクニカル的には売られ過ぎであり目先は反発を期待したいところですが、この状況ではそれも難しいところ。万一開戦のニュースが流れたら昨年8月以来の100円割れの展開もあるでしょう。これからの相場は、リスク回避を強く意識しながら慎重にポジションを取っていくことが求められます。

          
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